鎮疫祭
祭典日:2月13日(忌火は2月12日より15日まで)
鎮疫祭(ちんえきさい)は、神仏習合時代までは宇佐宮の神宮寺「弥勒寺」の守護神であった「祇園社(現在の八坂神社)」の斎庭で、陰暦正月13日に「御心経会(おしんぎょうえ)」として営まれた法会であった。疫病、自然災害、その他の不幸を防ぐために斎行される祭であり、明治13年(1880)以降に「鎮疫祭」として神道式の名称に改められ、今日に至っている。
どんど焼き
この祭は約千年前、宇佐宮の僧侶が般若心経を夜通し唱える毎年の儀式として始まったとされている。般若心経を唱えることから「御心経会」と呼ばれていた。明治初年に発せられた神仏判然令により弥勒寺は廃されてしまったが、その歴史は現在でも受け継がれ、祭典中は僧侶による般若心経の読経が行われる現代では珍しい神職と僧侶による合同の祭事である。
前日12日には、宵祭(よいまつり)が斎行される。八坂神社の境内で焚かれる忌火(いみび)にて、近隣の氏子たちは古い神符類を焚き上げて厄疫退散を祈る。古くはこの忌火を持ち帰り、各集落にて「どんど焼き」を行っていた。
翌日の13日、宇佐神宮の神職と真言宗の僧侶は上宮での祭典の後、従者である白丁(はくちょう)を従え八坂神社に参進し神事を執り行う。
宮司の祝詞奏上の後、白丁が神職の玉串と共に五色の幣帛(へいはく)を鳥居の上に投げ越す「幣越神事」が始まる。この幣帛は3.5mもあり、鳥居を超えたものは特に縁起が良いとされている。幣帛には、一年間、病気や災害から家庭を守る御利益があるとされることから、かつては多くの人々がこの紙飾りを持ち帰ろうと競った。
幣越神事に続いて、八坂神社の正面の舞台で舞楽という宮廷舞踏の二つの舞が行われる。「振鉾(えんぶ)」は舞台の清めの儀式として行われる鉾を持った神聖な舞で、「陵王(りょうおう)」は6世紀の中国の勇敢な王の物語を語る舞である。その後、真言宗僧侶による般若心経読経と独特勇壮な行事が続き、祭典後の「鳩替神事」で締め括られる。
この鎮疫祭は、大分県選択無形民俗文化財に指定されている。
舞楽「振鉾」
舞楽「陵王」
更新日:2024年03月01日