「水平社宣言100周年」について今一度考えてみましょう
令和4年3月3日は、大正11(1922)年に「全国水平社」創立大会で「水平社宣言」が読み上げられて100周年にあたります。「水平社宣言100周年」を機に、今一度人権について考えてみましょう。
新型コロナウイルス感染症拡大への不安は、感染者や医療従事者とその家族の方への差別や暴言、インターネット上での偏見に基づく悪質な書き込みなどの人権侵害を生み出しています。
「人の世に熱あれ、人間に光あれ」
皆さんは、この言葉を見聞きしたことがありますか。この言葉は、今から100年前の大正11(1922)年に発表された「水平社宣言」の最後の一節です。「水平社宣言」は「日本初の人権宣言」とも称されており、この宣言に込められた当時の人々の思いから、現在のコロナ禍を生きる私たちは今、何ができるでしょうか。
水平社宣言とは
大正11(1922)年3月3日、京都の岡崎公会堂で、被差別部落の人々の解放をめざして設立された「全国水平社」の創立大会で読み上げられた宣言文が「水平社宣言」です。この宣言には、長い歴史の中で不当な差別を受けてきた人々の切実な思いがつづられているだけでなく、人間を尊敬することによって、すべての人々が部落差別をはじめ、あらゆる差別を受けることなく、人間らしく暮らしていける社会の実現を願う気持ちが込められています。
(※大分県水平社創立大会は、大正13(1924)年3月に別府市で開催)
水平社宣言(現代語訳)
全国各地で歯を食いしばって生きている被差別部落のみなさん、今こそ手を取り合って進みましょう。
長い間いじめられ差別をうけてきた被差別部落のみなさん。1871年の解放令から約50年、私たちのためといって、多くの人々によって差別をなくすための運動が行われてきました。しかし、それらの運動はあまり役に立ちませんでした。人間は平等であり、尊敬すべきものです。しかし、人をあわれんだり、同情したりする考え方しか持たない人々は、私たちを気の毒な人たちだと思って運動してきたのです。
私たちを救ってあげようという運動は、かえって多くの私たちの仲間をだめにしてしまいました。だから、今、差別を受けている私たち自らが立ち上がったのです。人間だれをも尊敬し、大切にすることによって差別のない社会をつくろうという運動を自主的にはじめたのです。私たちは、私たちの手で部落差別をなくしていくのです。
被差別部落のみなさん、私たちの祖先は差別を受けながらも、自由で平等な社会を願い、闘ってきました。私たちは政府の身勝手な政治によってつくられた身分制度の犠牲者であったが、世の中に欠かすことのできない仕事に携わり、社会を支える存在でもあったのです。その中でさまざまな差別を受けてきたのです。しかし、そのような悪夢のような差別の中でも、私たちの祖先の体の中には、誇り高く生き抜こうとする人間のあたたかい血が残っていました。そして、その血を受け継いだ私たちは「民衆が世の中の主人公になる時代」にたどりついたのです。私たちのしてきた人に嫌われる仕事を誇れる、そして人に嫌われる仕事をしてきた私たち自身を誇れる時がきたのです。
私たちが被差別部落の人間であることを誇りうる時代がやってきたのです。
私たちは、この世の中が、私たちを差別することのみにくさに気づかない人々や、差別されることのつらさに気づかない人々が多くいる世の中だということを知っています。だから私たちは、心から人間の尊さやあたたかさが大切にされる、差別のない世の中を心から願うのです。
水平社はこうして生まれました。
人の世に熱あれ、人間に光あれ。
(現代語の出典)
「部落問題学習の授業ネタ2 社会科 日本史でやってみよう」(部落問題学習ネタつくろう会編、解放出版社)より
実現へ向けて
様々な差別解消に向けて、平成28(2016)年に「部落差別解消推進法」をはじめ「人権三法」が施行されました。水平社宣言から100年後の現在、この宣言がめざした「あらゆる差別を許さず、誰もが一人の人間として尊重される社会」は実現しているでしょうか。
現在は、100年前とは違って、多くの人々が自由に意見を交わせる時代です。こうした今だからこそ「水平社宣言」に込められた当時の人々の思いに寄り添い、お互いを「尊敬し合う」ことにより、すべての人の人権が尊重される真に自由で平等な社会を私たち皆で作っていきましょう。
この記事に関するお問い合わせ先
人権啓発・部落差別解消推進課 人権啓発・部落差別解消推進係
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更新日:2022年03月04日