高校入学式祝辞(平成30年4月10日)

更新日:2020年08月07日

高校入学式

春光うららかな季節を迎え、爽やかな躍動が感じられるこの佳き日、平成三十年度の入学式が挙行されるにあたり、一言お祝いの言葉を申し上げます。新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。決意も新たな皆さんと、これまで限りない愛情を注いでこられましたご家族の皆様に対し、心よりお慶びを申し上げます。

さて、新入生の皆さんは、期待と不安が交錯しつつも、希望に満ち、それぞれの夢を膨らませていることと思います。高校生としての第一歩を踏み出される輝かしい門出にあたり、夢をあきらめずに人との出会いを大切にすることで道を切り拓いた郷土の偉人、「南一郎平」のお話を紹介いたします。 宇佐平野の中央を南北に流れる駅館川の西側には、奈良時代から条里制の区画をもつ広大な水田が広がっていました。一方、東側は川面よりも二十メートルも高い台地であったため、水に乏しく、米がつくれず、江戸時代までは畑作にしか利用できませんでした。人々の生活は苦しく、畑に水を引き、水田で米をつくることが長年の夢でした。その一帯に現在では広大な水田が広がっているのは、広瀬井手が豊富な水を届けているからです。この広瀬井手を完成させた人物が宇佐市金屋で大庄屋をしていた南一郎平です。

一郎平は、二十代半ばで父親がやり残した広瀬井手の工事再興を決意、同志を集め、周囲を説得し、資金の調達に奔走しました。一八六五年(慶応元年)二十九歳の時、本格工事に着手し、八年後の一八七三年(明治六)に夢は実現しました。しかしながら莫大な資金を工面するため、私財をなげうっただけでは足りず、手形を発行するも、返済ができずに二度の入牢まで経験しての成功でした。

そんな一郎平には、人生を決定づけた大恩人との出会いが二回ありました。一人は、完成の保証がない広瀬井手工事に莫大な資金の援助を確約してくれた広瀬久兵衛です。もう一人は、一郎平の人物と手腕にほれ込んで、のちに日本三大疏水と呼ばれる大規模な事業へといざなった松方正義、のちの内閣総理大臣です。

日本三大疏水とは、福島県の安積疏水、栃木県の那須疏水、滋賀県と京都府にまたがる琵琶湖疏水の三か所を指します。いずれも、国家事業的な規模で計画され、日本の近代文化にも大きく貢献しました。疏水はもはや、農業用水にとどまらず、市民の飲料水の確保や水力発電による電力の供給など、市民生活に欠かせないインフラをも担っていきました。このすべての事業に南一郎平がかかわったことから、日本三大疏水の父と呼ばれているのです。

一郎平がふるさとの夢のため、先人から受け継ぎ磨き上げた手腕を今度は国の夢のために発揮されることになったのです。夢をあきらめないこと、人との出会いを大切にすることなど南一郎平の生き様は、現代を生きる我々に多くのことを教えてくれます。

新入生の皆さんは、本日からそれぞれの夢や目標に向かって歩むこととなります。壁にぶつかることも多々あろうかと思いますが、そんな時、南一郎平の生き方を思い出してほしいのです。夢をあきらめずに人との出会いを大切にしていけば、必ずや道は拓けてきます。皆さんの夢が大きく花開くことを心からご期待申し上げます。

終わりに、新入生の皆さんのご多幸と光り輝く前途をご祈念申し上げ祝辞といたします。

平成 30年 4月10日

宇佐市長 是永 修治

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