市長コラム「平清経入水」(平成30年4月号)

更新日:2023年04月07日

平清経入水(H30.4月号)

《祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理を顕す》の名調子で有名な平家物語に宇佐市での出来事が記されています。寿永2年(1183年)、木曽義仲に都を追われた平家一門は安徳天皇を擁し九州の大宰府に逃れますが、緒方惟栄の裏切りにあい、山鹿を経て宇佐神宮を頼ります。平家物語では《山鹿へもまた敵寄すと聞こえしかば、平家取る物も取り敢へず、小舟どもに取乗って、夜もすがら豊前の国柳浦へぞ渡られける》とあります。

平家一門を代表して平清盛の子・重盛の三男である清経が宇佐神宮に武運を祈願すると「世の中の うさには神の 無きものを 何祈るらん 心つくしに」というご神託。前途を悲観した清経は柳ヶ浦沖に入水します。享年21歳。平家物語では《清経は何事も深く思い入れ給へる人にておわしければ、ある月の夜、やはら舷に立出でて(中略)閑に経読み念仏して、海にて沈み給ひける》とあります。

長洲は小松殿と呼ばれた重盛の領地でした。そこから命名された小松橋。柳ヶ浦側にある供養塔から沖を眺めると、名手といわれた清経の物悲しい笛の音が聞こえてきそうです。

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