クヌギ林とため池がつなぐ「国東半島・宇佐」の農林水産循環 ~森の恵みしいたけの故郷~

更新日:2020年08月19日

「国東半島・宇佐地域」の農林水産循環システムが「世界農業遺産(GIAHS)」に認定されました 平成25年5月30日、石川県七尾市で開催された「世界農業遺産(GIAHS)国際会議」において、宇佐市を含む4市1町1村(宇佐市、杵築市、豊後高田市、国東市、日出町、姫島村)からなる「国東半島宇佐地域世界農業遺産推進協議会」が申請していた「クヌギ林とため池がつなぐ国東半島・宇佐の農林水産循環」 ~森の恵みしいたけの故郷~ が「世界農業遺産」に認定されました。これは、宇佐神宮を中心とした千年以上続く「国東半島・宇佐地域」の伝統的な農耕文化やくらしと密接に結びついた民族宗教文化の歴史が世界に認められたことになります。  

シイタケ
認定の様子
宇佐神宮

ジアス認定に向けたこれまでの経過

平成24年10月2日、関係6市町村により世界農業遺産推進協議会の設立に向けた準備会議を開催平成24年11月1日、関係機関と世界農業遺産の取組状況および今後の見通しに関する協議平成24年11月9 日、関係機関と世界農業遺産の取組に向けたスケジュールと申請の流れの協議平成24年11月14日、関係機関と世界農業遺産の申請に関する協議平成24年11月~平成25年2月、関係機関と随時協議を継続平成25年2月24日、国連食糧農業機関と国連大学関係者による事前現地調査の実施(GIAHS事前調査)平成25年3月12日、関係機関と申請内容とスケジュールの協議平成25年4月8日、関係機関と申請に関する協議平成25年4月9日、関係機関と申請内容とスケジュールの協議平成25年4月10日~11日、関係機関と申請に関する協議平成25年4月13日、国東半島宇佐地域世界農業遺産推進協議会設立総会・講演会(講師:永田氏)実施平成25年4月18日、広瀬知事が農林水産大臣と面談平成25年4月19日~24日、関係機関と協議平成25年5月4日、国連大学による現地調査平成25年5月13日、農林水産省の協力名義使用承認を受けて、協議会が国際連合食糧農業機関へ申請書を提出平成25年5月21日~22日、国際連合食糧農業機関本部(ローマ)へ申請内容の説明平成25年5月30日、平成25年5月29日~6月1日に石川県七尾市和倉温泉で開催された「世界農業遺産国際会議」で、世界農業遺産に認定

「国東半島・宇佐地域」が世界農業遺産に選定された理由

林

日本最大のクヌギ林と多面的機能大分県におけるクヌギの蓄積量は全国の約22%を占めており国内最大です。中でも「国東半島・宇佐地域」には、森林面積に占めるクヌギ林の割合が11コンマ2%と県平均の10コンマ5%を上回っています。これは、複雑で特徴的な地理条件のもと、しいたけ栽培の原木や薪炭用材として有用であるクヌギが盛んに里山に植林されてきたたことに由来します。ここで、かん養された水源が農林水産物や農村生活、多様な生物を育み、里山と農村の美しい景観を形成しています。 クヌギは、伐採しても、根株から萌芽(ぼうが)して約15年で再生するため、木材資源が循環するという優れた特性を持っています。さらに、落ち葉やしいたけ栽培で使用を終えた原木は、腐植してミネラルの豊富な土となり、膨軟な保水層を形成します。

ほだ木

森林資源から産出される原木しいたけ クヌギは、ほだ木として、しいたけの生長に必要な栄養源を供給し、原木しいたけの生産に利用されています。クヌギ林という森林資源が、「原木しいたけ」という食料を産み出すというシステムは、耕地が限られたこの地域において、栄養・生活保障の面において大きな貢献を果たしています。さらに、原木しいたけの栽培が行われることにより、クヌギ林の伐採と再生が繰り返され、森林の新陳代謝を促し、水源のかん養など森林の公益的機能の維持が図られるとともに、里山の良好な環境や景観保全につながっています。 品質の良い原木しいたけを栽培するポイントは、使用する「ほだ場」と「水」にあるといっても過言ではありません。通常、原木しいたけ栽培の「ほだ場」は、スギなどの針葉樹林を利用しますが、「国東半島・宇佐」では冬から春先にかけて降水量が少なく、低温であるという気象条件のもと、適度な照度と温度が確保できる広葉樹林を「明るいほだ場」として利用しています。

オオサンショウウオ

クヌギ林とため池群が育む多様な生態系降りそそぐ雨水は、落ち葉などが堆積した土にしみこみ、有機物や栄養塩を含んだ湧水となり、植物プランクトンや海藻などの栄養として、水田農業や沿岸漁業などを支えているだけでなく、多様な生態系を育んでいます。そのため、現在でも生物の多様性が比較的良好な形で保存されているといえます。 コバノイクビゴケのような植物や、アカザやクボハゼなどの魚類において、固有種の生息が確認されているほか、国の特別天然記念物に指定されているオオサンショウウオや、生きた化石と呼ばれるカブトガニの貴重な生息地となっていることもこの地域の豊かな生物多様性を象徴しています。

鬼会

今に息づく六郷満山文化 「国東半島宇佐地域」には、宇佐八幡宮と関係の深い天台宗寺院群が多数存在し、農業に関係する特徴ある祭礼が今もなお残っています。両子山系から放射状に延びる谷筋に沿って成立した武蔵(むさし)、来縄(くなわ)、国東、田染(たしぶ)、安岐(あき)、伊美(いみ)の6つの郷(ごう)、いわゆる六郷と呼ばれた国東半島は、九州最大の荘園領主であった宇佐八幡宮(国宝)とその神宮寺の弥勒寺(みろくじ)の僧が開いた寺院群による神仏習合(しんぶつしゅうごう)の「六郷満山文化(ろくごうまんざんぶんか)」が華開いたことで知られています。 さらに、11世紀の荘園遺跡に起源を持ち、14世紀前半から15世紀における耕地・村落の基本形態が現在にほぼ継承されていることが高く評価されたことで、2010年には「田染荘小崎の農村景観」が国の重要文化的景観に選定されています。

世界農業遺産(GIAHS)に登録されたことによるメリットと責務

世界農業遺産への登録によって、「国東半島・宇佐地域」の知名度の向上に伴い「世界農業遺産ブランド」を「観光振興」や「農業振興」へ活用し、相互が連携することにより新たな地域の農業の牽引が期待されます。また認定を契機として地域の農林水産物に認証制度を設けるなどの取り組みを通して付加価値を向上させることが出来ます。 世界農業遺産に認定されることによって農業生産活動そのものに直接の制限が加えられるものではないが、認定の核となる農業システムが維持されていくことは必要となってきます。

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